純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
茨は探偵事務所の所長として今夜の会に出席しているが、実際はとある仕事の依頼で参加者の調査も兼ねているのだとか。調査のほうがついでに思えるほど、しっかり食事を楽しんでいるところが彼らしい。
睡にとっては、息の詰まるようなこの場に気心の知れた茨がいるだけで心強く感じていた。
重要な面々にはひと通り挨拶を終えたので、時雨も睡も気を楽にしてまともに食事をし始める。高級食材の味をやっとしっかり感じられるようになって表情を緩める睡を見て、茨も微笑ましげに言う。
「睡ちゃんは慣れない場だから大丈夫かなってちょっと心配してたけど、ちゃんと社長夫人って感じで立派だよ。堂々とした振る舞いはさすがだね」
「いえいえ、粗相があったかもしれませんし」
謙遜して首を横に振る睡に、シャンパンを口に運ぶ時雨が「そんなことはない」と否定する。
「十分、よくやってくれていたよ。ひとりで来ようか迷ったが、やっぱり睡も連れてきて正解だった」
本音をこぼされ、睡は先ほどの夫人たちの陰口を思い出してちくりと胸が痛む。もしや時雨も、実は元花魁を連れてくることには抵抗があったのだろうか。