純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
〝私は色目なんて使いませんよ〟と物申しておこうかと喉元まで出かかったとき、時雨が続きを口にする。
「君を男たちの目に触れさせたくなかったんだ。ひと目惚れされたら困るからな」
独占欲を露わにした瞳に捉えられ、睡はきょとんとして言葉を呑み込んだ。ひとりで来るか迷った理由はそういうことかと理解した途端、みるみる頬に熱が集まる。
時雨は最初から、睡を花魁としてではなくひとりの女性として見てくれている人。それはわかっているはずなのに少しでも疑ってしまい、睡は心の中で反省した。
人目を気にせずのろけるふたりを、茨は呆れつつもにんまりとして眺める。
「相変わらずお熱いねぇ。この調子なら結婚式も楽しみだな」
「祝言は挙げないぞ」
時雨の意外なひと言に、睡は目をしばたたかせた。
祝言とは自宅で挙げる婚礼の儀式のことであり、昔から日本で一般的に行われているもの。花嫁は自宅で支度をし、日が落ちる頃に花嫁行列を成して新郎の家へと向かうのだ。