純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

 以前、茨が『時雨ほどの地位にある人は、お披露目の意味でも結婚式は避けられないだろう』と話していたが、しなくてもいいのだろうか。茨も意外だったようできょとんとしている。


「え、そうなの?」
「俺たちは互いに家族がいないんだから、やる必要ないだろ」
「あー、まあ確かに」


 淡々とした時雨の意見を聞き、茨と同じく睡も納得する。祝言は家と家を結ぶためのものなので、親交のある親族がいないふたりにはできないといったほうが正しいかもしれない。

 どうりで一向に式の話が出ないわけだと腑に落ちるも、睡はほっとしたような、少々残念なような複雑な気持ちになる。

 自分には相応しくないと思っていた結婚式だが、挙げないとなると正直物寂しい。神聖な儀式や白無垢は、睡だけでなく玉響の夢でもあったからだ。

 しかし、式を挙げたいとわがままを言う気は毛頭なく、「俺も花嫁行列に交じりたかったのに」などという茨の冗談にただ笑っているだけだった。

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