純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
翌週の日曜日、睡は時雨と急きょ出かけることになり、なぜかいつにも増してにこやかな菊子に見送られて家を出た。
桜の花びらに交じって蝶が舞う中、下駄を鳴らして時雨の隣を歩きながら問いかける。
「急にお出かけなんて珍しいですね。今日はどこへ行くのですか?」
「富井さんの呉服屋だ。ぜひ来てほしいと呼ばれてね」
なんの用かはわからないが、行き先を聞いた睡はぱっと表情を明るくした。瑛一の呉服屋に行くということは、四葉にも会えるかもしれない。
四葉とは四片の本名である。藤浪楼が焼けてしまったあと瑛一が身請けし、ふたりは一緒に暮らしているのだ。
あとで聞いたところ、瑛一の家族が花魁を招くことを最初は反対しており、時間をかけて説得していたのだそう。しかし四葉本人と会った家族は、彼女の人柄や着物の知識が豊富なところにほだされ、今では良好な関係を築いている。
『将来、私も女将って呼ばれるかもね~』なんて上機嫌でいるくらいなので、心配はいらないだろう。
睡と四葉は、今もヱモリや自宅で時々会っている。以前約束した通り、互いに普通の女性としての生活を送れていることがなにより嬉しい。