純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「こういうときくらい、夫婦の時間をお楽しみくださいな。もうすぐまた大変になりますから」
菊子は睡のお腹に目をやってお茶目に笑った。時雨は意味深な笑みを浮かべ、睡にだけ聞こえるようにこそっと呟く。
「楽しむ前に時間切れになったけどな」
「……十分ですよ、今は」
娘の前で先ほどの接吻を思い出させないでほしいと内心物申しつつ、睡は頬を火照らせてそっぽを向いた。
揚羽は大人のやり取りなどそっちのけで、物欲しそうな顔をして言う。
「いばらのおじちゃんにもらったおかしたべるー」
「はいはい。帰ったら食べようってさっきお約束したものね」
菊子は従順に返事をして、この間遊びに来た茨が揚羽のために置いていった駄菓子を取りにキッチンへ向かった。
その間、揚羽は散歩中の出来事をふたりに一生懸命話して聞かせる。
午前中に降った雨でできた水溜まりに入りそうになったこと、睡蓮の花が綺麗だったこと、指先に蝶が止まったこと。
微笑ましく耳を傾けていると、揚羽は一段と目をきらきらさせる。