純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
偶然、ただ同じ名前だっただけ。それでも、〝たまき〟と名づけられた子がこれから新しい人生を歩んでいくのだと思うと、なんだか胸が一杯になる。
睡はふいに瞳に込み上げるものを瞬きで散らし、揚羽のさらさらの髪を撫でて微笑みかける。
「いい名前だね。きっとたまきちゃんも幸せになるよ」
もしも輪廻転生というものがあるのなら、来世では愛する人と幸せに暮らしてほしい──。
そんな願いを込めて姉女郎の笑顔を蘇らせていると、時雨が母子ふたりを腕の中にしっかりと包み込んだ。
母と共に抱き寄せられた揚羽は、不思議そうにきょとんとして父を見上げる。
「おとーさん? どうしたの?」
「……なんでもない。大好きな君たちをぎゅってしたくなっただけだ」
可愛らしいことを言う時雨に、睡は笑いをこぼしつつも、その気持ちにつくづく共感して胸にすり寄った。
──もし自分も生まれ変わったら、またこの人と出会って、恋に落ちて、素敵な家庭を築きたい。
そんな夢物語を真剣に願い、睡は溢れんばかりの愛に囲まれて幸せを噛みしめた。
*完*


