純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

 しばらくして、肩甲骨の上あたりにある痣を確認したらしい九重が口を開く。


「これは故意につけられたものではないようだな」
「はい……生まれつきです」


 睡の返事を聞いた九重の表情からわずかに険しさが消え、軽く頷く。


「峯村社長に心だけでなく身体まで傷つけられていたんじゃないかと思ったが、そうではないようで少し安心した」


 気遣うような言葉と、そっと衿を戻す仕草に、睡の身体から力が抜けていく。

 哲夫には精神的な苦痛を与えられたが、暴力を振るわれたり性的暴行を受けたりすることはなく、それだけは救いだった。どうやら九重は、睡が痛めつけられていなかったかを確認したかったらしい。


(下心や好奇心とかじゃなく、私の心身をただ心配して……?)


 鏡越しに彼の顔を見やるとなんだか胸がもどかしくて、合わせた衿を握る手に無意識に力を込めていた。

 彼が時々かいま見せる優しさは睡の胸を打つ。少々冷徹で強引な印象を受けるが、きっと根は温情ある人なのだろう。

 ベッドに置いた帯を手に取る九重を見て睡は我に返り、慌てて崩れた着物を直す。
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