純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「それにしても、身請けされる前に馴染みの客を取らなくてよかったな。その調子では男の相手などできなそうだ」
鼻で笑いつつからかうような調子で言われ、睡は打って変わって頬を膨らませた。度胸のない女だと思われるのは心外だ。
「あなただからです」
手渡された帯を抱いて言葉を返すと、九重の眉がぴくりと上がる。
「お客様相手なら割り切って肌をさらしますし、その覚悟もとっくにできていました。でも九重様は、一夜の夢を求めてくる他の方とは違う。私をちゃんとひとりの人間として見てくれる」
財力を見せつけたり、甘い台詞を吐いたりして疑似恋愛を楽しむのではなく、花魁であってもなくても関係ない態度で接するこの男の前では、睡はただの女になる。
「だから……恥ずかしいんです」
ぽつりと本音をこぼすと頬に熱が集まるのを感じ、自分を凝視している九重を視界から消すように瞼を伏せた。
文句をつけたかったはずなのに、なぜ自分が照れているのか。彼と出会ってからずっと調子を乱されている。自分自身のことがよくわからない、この感覚は初めてだった。