純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
その日の夕飯は、女中である菊子が用意したものを時雨と共に食べることになった。食堂のテーブルに向かい合って座ると、着物に白い割烹着をつけた菊子が料理を運んでくる。
ふたりの前に並べられたのは、牛肉を赤ワインでじっくり煮込んだビーフシチュー。遊郭で食べていたのは和食が主だったため、睡はその濃厚な味わいに感激して「ん~!」と声を上げた。
「とっても美味しいです! こんなに柔らかいお肉、初めて食べました」
泣きそうなくらい目をキラキラさせる睡に、テーブルの横に立つ菊子は目元のしわを深めて嬉しそうに笑う。
「たまたま昨日から煮込んであったんですよ。ごちそうを用意できてよかったです。時雨様が女性をお招きするなんて流れ星を見るくらい珍しいですから、睡様はよっぽど大切な方なんだろうなと……!」
「誤解だ、菊子さん」
眉をひそめる時雨も、頬を染めて興奮気味の菊子もおかしくて、睡はクスクスと笑った。
菊子が〝様〟をつけて呼ぶのは昔から絶対の決まりだったからと変えないのだが、なんだか本当の親子のようだ。