純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「それに……私は、姉女郎のようになりたかったのかもしれません」
再び煙管に目線を落とし、玉響の姿を蘇らせる。
花魁としての振る舞いを見習っているうちに、いつしか睡は彼女のように生きたいと思うようになっていた。
「みすぼらしかった私にも優しくて、とっても美しくて、世の男性すべてを魅了するような姉さんがすごく格好よかったんです。お客様から、身も心も本当に愛されているようで……」
少しだけ開いた襖の隙間から、男と絡み合う場面をつい見てしまったことがある。相手が間夫の瑛一でなくても、玉響の声、表情、仕草、どれもが官能的でありながら決して汚らわしくなかった。
愛のない行為でも、あんなふうに抱かれるなら一時の幸せを得られるのではないかとまで思った。睡も玉響に魅せられる者のひとりだったのだろう。
黙って耳を傾けていた時雨は、感情を読み取れない無表情で軽く頷く。
「君は周りの人に恵まれたらしいな。とはいえ、吉原でのまがい物の色恋を、本物の愛だと勘違いする前に出られてよかったんじゃないか」
確かにその通りなのだが、素っ気ない上に嫌味を感じる口調が引っかかる。