純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
「はい、庭に綺麗な水仙が咲いていたので。時雨さんのお母様の道具を使わせていただきました」
「奥様も生け花がお好きでしたからねぇ。睡様が華道を習っていたとおっしゃったので、私も久しぶりに見たくなったのですよ」
菊子の言葉になるほどと頷き、近くに寄ってじっくり眺める。花は可憐で、かつまっすぐ伸びた葉が凛々しく、睡自身を表しているように感じた。
腕を組んで眺める時雨の後ろから、睡が遠慮がちに声をかける。
「すみません、勝手に……ご迷惑でしたか?」
「いや、なかなかいい出来栄えだ。花は癒されるな」
自然に口元が緩む時雨を見て、睡にも嬉しそうな笑みがこぼれた。
菊子がキッチンに戻って料理の仕上げをしている最中、ふと気になったことを問いかけてみる。
「睡蓮の花は生けられるのか?」
「ちょっと難しいですが、できますよ。平たい器を使って水に浮かべるように生けるんです」
「へえ、それも見てみたいものだな。君なら睡蓮も美しく魅せるんだろう」
己のもうひとつの名であった花を彼女自身が生けたら、また味わい深い作品ができあがりそうだ。