純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
単純に興味があって口にしたのだが、睡に目線を移すとなぜか浮かない表情をしている。どうかしたのか問いかけようとしたとき、彼女は探るような時雨の視線に気づいて顔を上げた。
「ありがとうございます。雨の季節になったらできるといいのですが」
そう言う睡の微笑みが、心なしか寂しそうに見える。時雨の胸にわずかな引っかかりを残したまま、彼女はキッチンのほうへと向かっていった。
その日の晩も、ふたりは同じベッドで眠ることにした。
睡は一度遠慮したものの、ベッドから落ちる寸前だったという話を聞いてやはり添い寝させてもらおうと決めたのだ。
この日も先に眠りに落ちたのは睡のほうで、むにゃむにゃとなにかを言っている。
「ん~きもちぃ……しぐれしゃん……」
相当寝心地がいいようでなによりだと、時雨の口元が緩んだ。確かに普段は感じないぬくもりが隣にあるが、時雨自身も不思議としっくりきている。
睡の無防備な寝顔を眺め、なんとなく髪にそっと触れてみると、身体より心が温かくなる。
共同開発の件、哲夫への対応、睡の今後。絡み合ったそれらがすべてうまくいくように、考えを巡らせながら瞼を閉じた。