純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

 翌日、無事富山に着き調査を始めた茨から連絡が来た。哲夫の弱みを握るような情報が得られたかと期待したものの、返ってきたのは残念なものだった。

 哲夫の自宅や帰宅途中の様子を偵察しても、なんら怪しいことはなくひとりで暮らしているらしい。見当違いだっただろうかと落胆するも、もう少し調査を続けてほしいと頼んで電話を切った。

 睡の居場所がわかったとき、すでに哲夫に連絡を取ってしまっていた。適当に理由をつけて会わせるのを引き延ばしているが、いつまでもこのままではいられない。

 とりあえず直接哲夫のもとへ行き、話し合うことにする。もし現在彼が真っ当に生きていたとしても、睡を精神的に苦しめていたのは事実。それを見過ごすわけにはいかない。

 同居生活を始めて三日目の夕食時、時雨は睡に向かって告げる。


「明日、君のお義父さんに会いに行く」


 睡の身体がぴくりと反応し、食事をする手が止まった。


「そこで君の現状を話してみるつもりだが……」
「時雨さん」


 話の腰を折った睡は、なにかを決意したような強さが滲む表情で時雨としっかり目線を合わせる。


「私も父のもとへ行きます」

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