純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―

「俺は、君につらい思いをさせたくて吉原から出したわけじゃない。きっかけは事業のためだったが、この身請けでその子には幸せになってほしいと願っていた」


 遊郭から出たくても出られない女性が数多くいる中で、家族と再会できる機会に恵まれた睡は幸運だと、時雨は思っていた。その手助けをできるのは嬉しくもあった。

 しかしその家族が、父親として娘を愛せるのか信頼の置けない人物だったとは痛恨の極みである。彼女の幸せを約束できないのに、無責任に手放したりはしない。

 睡に安堵してほしくて、時雨は真剣な表情を少しだけ柔らかく崩す。


「会社も君も、必ず守ってみせる。だから、ここで俺を待っていてくれ」


 優しく、しっかりと諭され、睡は目を見開いた。その澄んだ瞳には、本当にいいのだろうかという戸惑いと、かすかな希望が揺れていた。

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