この恋が手遅れになる前に
「え……どうして……」
本田くんに章吾さんとの関係が知られているとは思わなかった。
「見てれば分かります。部長と付き合ってて別れたことも」
「っ……」
必死に取り繕ってきたのに、入社したばかりの子に簡単にバレてしまっていたなんて。
「俺なら古川さんだけを大事にします。他の人と結婚なんてしません」
「……ないで」
「古川さん、俺は……」
「それ以上言わないで!」
本田くんの顔がはっきりわかるほど目が慣れた。だから目を逸らすことなく睨みつけた。
「必死に自分を保ってるの! こんな冗談やめて!」
「冗談? 俺が冗談で古川さんを連れ込んだと思ってます?」
本田くんは私の体を挟むようにドアに両手を強く突く。まるで私を閉じ込めるように。
「俺が何年古川さんを追ってたと思います? 冗談でこんな卑怯な招き方しません!」
何年も追ってたって、本田くんは学生の時からバイトとして入社していたけれど私と会ったのは今年に入ってからだったはず。どういう意味だと聞きたいのに言葉が出ない。
「部長と付き合ってた時は諦めてました。でも今はもう余裕がないんです。そして遠慮もしない」
この部屋から出ようと本田くんの肩を押すと、その腕を本田くんの手で掴まれてドアに押し付けられた。
「本田くん?」
あまりに理解不能な行動に混乱して涙が浮かぶ。
「好きです……」
「え?」
「古川さんが好きです。強引に捕まえてしまうくらいに」
「本当に酔ってないの?」
「酔ってないです! 信じてくれないなら明日も明後日も、ずっと気持ちを伝えます!」
あまりに必死だから涙が引っ込んだ。まさか本田くんにこんな形で告白されると思っていなかった。