この恋が手遅れになる前に
「さっき古川さん言いましたよね、俺の気持ちを知ったら変わるかもしれないって。俺は古川さんが好きです。先輩後輩の関係から変わりたい」
確かに本田くんの気持ちを好きな人に伝えればいいと言った。でもそれが私だとは思ってもいなかった。
「俺で傷を癒してくれませんか? 部長のことを忘れさせます」
「なに……忘れさせるって……」
必死に本田くんの目を見つめる。視線を外したら強引なこの子に負けてしまいそうだ。
「本田くんにできるの? こんなことして……恐怖で失恋を忘れさせるってこと?」
「っ……」
本田くんの目が泳いだ。
「今なら何もなかったことにする。だから放して」
それでも本田くんは私を解放する気はないようで、手はずっと掴まれたままだ。
「本田くんモテるから、失恋した私の傷につけこむようなことをしなくても相手にしてくれる女はいるよ?」
「こうまでしても古川さんは俺のこと見てくれないんですか……」
本田くんの声が低くなる。
「本当に好きなんです……古川さんだけをずっと見てきました……」
声が震えている。掴んだ私の腕を解放すると優しく抱きしめられた。
「俺をそばにおいてください……大事にします……」
その言葉に引っ込んだはずの涙が再び溢れる。
「大事にって……これのどこが大事にしてるの? 無理矢理じゃない……」
「すみません。もうただ必死で。古川さんを逃がしたくなくて」
必死な声とは対照的に私の頭を撫でてきた手は優しい。
「だけど全力で古川さんを大事にしますから……部長の代わりでもいいです」
「代わりって……」
私が本田くんを好きにならなくてもいいってこと?