この恋が手遅れになる前に
「俺は奏美さんの恋人になったつもりです。奏美さんは違いますか?」
悲しそうな顔と声に責められている気がしてくる。
そうだよね、体の関係を持ったら普通は付き合うってことだよね……。
「…………」
私は本田くんを好きなのかわからない。それなのにこんなことをしていいのだろうか。本田くんの気持ちを利用して寂しさを紛らわすなんて。
「はぁ……」
本田くんは溜め息をついた。
「浮かれてるのは俺だけですか……」
「あの……」
「まあいいです。奏美さんはじっくり俺とのことを考えてください。こっちは今夜だけで終わりにするつもりじゃないんで」
熱を込めた視線を向けられて増々居心地が悪くなる。
「奏美さん、来て」
本田くんに言われるままベッドに近づくと手を引かれて端に座らされた。じっくり私の顔を見る本田くんは「すっぴんでもちゃんと女性ですね」と言った。
「な!? 失礼でしょ! 私これでも女だから!」
気が強くてガサツだと言われることが多いのは事実だけど、一応女らしく見せようとはしているつもりだ。
「すみません、バカにしたんじゃなくて確認したんです。政樹さんが奏美さんは化粧で誤魔化してるけど中身は男だって言ってたので」
「はあ!?」
あいつはなんてことを言ったのだ。いくら同期だからといっても政樹の前ですっぴんを見せたのは社員旅行の時くらいなのに。
「本田くんって政樹と親しいの?」
確か前は『次長』と呼んでいたのに。
「はい。政樹さんには学生のころから指導していただいてます」
「そうなんだ」
「化粧してなくても奏美さんは綺麗ですよ。特に今夜はすごく魅力的です」