この恋が手遅れになる前に
「涼平くんの気持ち、言ってくれればよかったのに」
「何で俺が涼平のことをお前に言うんだよ。自分のことで手一杯だっつの」
「政樹も恋愛で悩むの?」
「色々あんだよ」
政樹は性格に難はあるけれど綺麗な顔をしているしモテるだろうとは思っていた。悩むような恋愛をしているとは意外だ。
「あのさ、女ってクリスマスに何してほしいの?」
「え?」
「クリスマスプレゼントとか、行きたいところとか……」
政樹にそんなことを聞かれると思わなくて驚いた。今まで彼女の話とか聞いたことがなかったから。
「やっぱ彼女でもできたの?」
「まあ……」
そうじゃないかとは思っていたから政樹の口から話題が出たことに顔がにやける。
「どんな子? 年上? 年下? どこで知り合ったの?」
「うるせえよ! 質問に答えろって」
「教えてよ。政樹そういうの興味ないと思ってたんだから」
恋愛に関する相談を今されるなんて予想外。私がそんな面白い話に食いつかないわけがない。
「おはようございます」
いつの間にかエレベーターがフロアに着いて、ドアから涼平くんが出てきた。
「おはよう」
政樹をからかった笑顔のまま返事をすると涼平くんが暗い顔で私たちを見ている。
「じゃあ俺は行くから」
「今度教えてよ政樹」
「もうお前には聞かねえよ」
笑顔の私に対して政樹は不機嫌そうな顔をしてエレベーターに乗って下に降りて行った。
「古川さん、ちょっとクリスマス装飾の件で聞きたいことが」
「ああ、うん……」
涼平くんの低い声に戸惑う。この子の感情は声に出る。聞き慣れた怒りを含んだ声に身構えた。
「駅前ビルの入り口の件かな? 電飾が巻ける形の鉢は納品された?」