この恋が手遅れになる前に

私も頭が回らなくなっていたから助かった。
立ち上がると空いたイスに涼平くんが座る。パソコンの画面と発注書を見ながら加藤さんに丁寧に教えている。
涼平くんも1年目の新人で加藤さんの同期なのに、この二人は大分差がついたなとしみじみ思う。他の社員も同じように思っているのか私に「お疲れ」と苦笑しながら声をかけてくれる。

給湯室でコーヒーを淹れてカップをトレーに載せて戻ると加藤さんに笑顔が戻り、涼平くんと二人で笑い合いながらパソコンを見ている。

「コーヒー淹れたから飲んでね」

私は加藤さんのデスクにカップを置いた。

「ありがとうございます」

愛らしい容姿の加藤さんに微笑まれてつい可愛いなと思ってしまう。この子の笑顔はずるい。どんなに失敗したとしてもこの笑顔を見せられたら許してしまいそうだ。

「本田くんの分はデスクに置いとくね」

「ありがとうございます」

涼平くんも私に向かって微笑む。なんだかんだやっぱり新人くんたちは可愛い。

デスクにカップを置くといつまでも私を見つめる涼平くんと目が合った。
だから声に出さず「ありがとう」と唇を動かす。すると涼平くんは不思議そうな顔をした後に理解したのか笑顔で「はい」と唇を動かす。
『私を気にかけてくれてありがとう』の気持ちは伝わったようだ。










仕事に忙殺されてあっという間に25日の夜になった。これからイルミネーションの撤去作業だ。
ホワイトボードに27日の出社時間を記入する。今夜の作業を終えたら26日はそのまま休みを取る予定だ。

会社を出ると目の前には章吾さんの車が停まっている。運転席の窓が開いて顔を出した章吾さんは「乗って」と私を手招きする。

< 45 / 94 >

この作品をシェア

pagetop