この恋が手遅れになる前に

「だとしても……もう部長には関係ありません……」

自然と声が震える。

「私が誰とどんな付き合いをしようと部長にはもう関係のないことです……」

ふっと章吾さんは笑う。

「そうだね。俺は奏美を選ばなかった。でもまだ奏美が好きだよ」

言われた言葉を理解するのに時間がかかった。章吾さんはもう私に興味がなくなったのではなかったのか。

「……冗談はやめてください」

「本当だよ。別れるときに言ったでしょ。奏美のことを嫌いになったわけじゃないって。ただ縁談を断れなかった。それだけだ」

目が潤んでくる。今こんなことを言うなんてずるい。章吾さんへの気持ちが消えかかっていたのに。

「その気持ちは……消してください……」

「そうできればいいんだけどね」

顔を下に向けたからバックミラーを見ることはない。章吾さんに泣き顔を見られることもない。

「奏美もまだ俺のこと好きでしょ」

「っ……好きじゃないです……」

「本当は別れたくないのに、理解のある女だと思わせようと平気なふりをしたんだよね。そうさせてごめん」

「もうやめましょうこの話は!」

狭い車内で精一杯声を張り上げた。
これ以上章吾さんの言葉を聞いてしまったら抑えられなくなる。気持ちが溢れてしまう。
章吾さんにはもう奥さんがいる。理性を保たないと。

「ごめんね奏美……」

それだけ言うと章吾さんも無言になった。

クリスマスなんて大嫌いだ。毎年仕事仕事、恋人とロマンチックな夜を過ごしても翌年には嫌な思い出に変わってしまう。





商業施設の荷物搬入ゲートから中に入って車を停めるとお互い無言でエントランスへ移動する。

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