この恋が手遅れになる前に
「お疲れ様です」
先に撤収作業をしていた緑化管理部の社員に挨拶すると、私たちを見て椎名さんは目を丸くした。そうして私を手招きする。大人しく椎名さんのそばに寄ると「何でまた部長が?」と顔をしかめた。
「私も驚いてます……」
「一緒に来たの?」
「本社の前で車を停めて待っててくれたので……」
「はぁ……これだから俺は政樹派なんだよ」
椎名さんは本当に章吾さんが苦手なのだろう。普段は明るい人なのに、こんな風にあからさまに苦手な雰囲気を出す人じゃない。
私が戸惑っていることに気付いたのか椎名さんは「元カレさんを悪く言ってごめんね」と謝る。
「いえ、もう部長のことは本当に何とも思っていないので……」
「あの人ちょっと謎っていうか、何考えてるか読めないことがあるじゃん? 逆に政樹くんは裏表なく接してくれるから楽なんだよね。年が近いせいかな?」
椎名さんの言う通りかもしれない。章吾さんはあまり感情を出さない人だ。政樹は喜怒哀楽がはっきりしている。『怒』が強めではあるけれど。
「部長を悪く言っても仕方ないし、いつも通り撤去しよう」
「はい。よろしくお願いします」
今夜はクリスマス装飾を全て外し、正月用の華やかな装飾に変更する。そうして後日別の社員が正面玄関に門松を配置しに来るのだ。
章吾さんは他の社員に混ざって機嫌良さそうに電飾をモミの木から外している。ふと椎名さんを見ると誰かに電話をかけているようだった。
「はぁ……」
自然と溜め息が出てしまう。
もう人間関係に疲れる……早く年が明けてほしい。しばらく有休も取ってないし、仕事始めをずらすのもいいかもしれない。