この恋が手遅れになる前に
あと少しで作業が終わるという時、「お疲れ様です」と従業員通路からエントランスに入って来たのは涼平くんだった。
「え? 何で?」
担当でもない涼平くんの登場に疲れた私の頭は混乱した。
「俺が呼んだんだよ」
椎名さんは涼平くんに向かって手を振ると涼平くんもそれに応えて手を振り返した。
「椎名さんが?」
「さっき涼平に電話した。古川ちゃんを家まで送れって」
「え?」
「もう部長に手を出させないから」
「手を出されてるわけじゃないんですが……」
椎名さんは何か勘違いをしているようだ。私と章吾さんはもう終わっているのだから。
「というか、なんでそれで涼平くんを呼ぶんですか?」
「俺が知らないとでも?」
「何がです?」
「涼平の気持ちをだよ」
椎名さんの意味深な言葉の意味を聞き返そうとすると「お疲れ様です」と涼平くんが私と椎名さんのそばに近づいてきた。
「悪いな涼平」
「いえ、連絡ありがとうございました」
ニコニコと笑う涼平くんに私は慌てる。
「そっちの作業はどうしたの?」
今日は各取引先で撤去作業がある。涼平くんもそっちに行っているはずなのに。
「僕の担当は全て作業が終わりました。元々新人には大変な顧客は任されませんので」
「だから俺が呼んだんだよ。久々に涼平にも会いたかったし」
「それはおまけの理由で、本当は早く帰りたいから僕を呼んだんですよね?」
「まあそういうこと。俺のクリスマスはこの後が本番なんだよ。彼女を待たせてるんだから一刻も早く帰りたい。涼平も手伝え」
「はいはい」と笑いながら涼平くんはコートを脱いだ。
それからはすぐに作業が終わり、「じゃ!」と椎名さんは一番にエントランスから出て行った。