この恋が手遅れになる前に
「子供っぽいって思われても奏美さんが欲しくて仕方ないんで」
力強く言われて増々言葉が頭に響く。こんな風に口説かれたから心が揺れてあの夜体を繋げてしまったのだ。
「勢いで寝ただけで、その後奏美さんは全然相手にしてくれない。俺ばっかりが夢中だから嫉妬もしちゃうんです」
「そんなことないけど……」
涼平くんの言葉に揺れたこともある。照れたことも、嬉しかったことだってあるのだ。
「俺だけが焦って奏美さんは大人の対応で、散々俺の気持ちを伝えても奏美さんは全然落ちないから心が折れそうです」
「折れちゃうの? 今この瞬間涼平くんと居られて嬉しいのに?」
そう言うと涼平くんは目を見開いた。
「じゃあ折れません!」
子供のような反応に笑わずにはいられない。
「涼平くんのこと、ちゃんと意識してるよ」
「目が覚めてきました」
「それは良かった」
本音が自然と口をついて出たことにほっとする。こんな私を好きだと言ってくれるこの子を受け入れられるように、これから更に心を開けたらいいな。
「もっと眠気を吹き飛ばすために、奏美さんが眠くなければ話したいです」
「んー……じゃあ、涼平くんがどうしてうちの会社に来たのか聞いていい? 美大卒って聞いてるけどデザイン会社にはいかなかったの? 植物に興味あったとか?」
「実は俺小学校まで会社の近くに住んでたんです。フラワーイベントって近くの小学校が体験できますよね」
毎年会社が行うイベントは地元の小学校6年生が社員に交じってフラワーカーペットの作成を体験することができる。
「それで会社を知ったの?」
「はい。あの経験が楽しくて」
涼平くんは「小学生男子が花に興味を持つなんて変わってますよね」と苦笑した。