この恋が手遅れになる前に
加藤さんはお世辞にも仕事ができるとは言えない。同僚からの評価は低く、顔採用なのではないかとの噂もある。花を扱う会社では社員も綺麗でないといけないと公言する役員がいるから加藤さんは入社できたんだ、なんて先輩社員はあからさまに嫌みを言う。
そのことを今思い出してしまう自分が嫌になる。
私は加藤さんに嫉妬している。今このドアの向こうで涼平くんと二人きりでいることが嫌で堪らない。
5歳も年が違う子に嫉妬するなんて情けない。でも涼平くんも満更でもなさそうじゃん……。
ずっと私だけを好きでいたせいで、今まで他の女の子の魅力に気づいていなかったんじゃないだろうか。涼平くんほどの人ならこれから素敵な女性と恋をする可能性があるし、その人に甘い言葉でも囁くのかもしれない。私にしたように大事そうに抱き締めるのだろう。
そんなこと聞きたくないし見たくもない。
私はコーヒーを諦め、気配を消して給湯室から離れた。
◇◇◇◇◇
大通りを歩行者天国にして行われるフラワーイベントは毎年盛況だ。地元の小学校の校庭や役所の管理する施設を借りて作成するフラワーカーペットはSNSにたくさんアップしてもらっている。
今年は美大卒の涼平くんがデザインしたイラストをもとにした作品も飾られる。
私は加藤さんと共に小学校の校庭で校章と地元のゆるキャラをプリントした数メートル四方のシートを広げていく。この上に6年生が図案に沿って花びらを散らしていくのだ。
フラワーカーペットで使う花びらは昨日社員が総出で1枚1枚丁寧に取ったものだ。商品としては利用できなくなった花だからくすんではいるものの、大量に集まると圧巻で完成したらさぞ綺麗だろう。