この恋が手遅れになる前に
今年も始まったな、と既に数回イベントを経験している私は慣れた光景に焦ることもなくなった。大量の花びらに囲まれる経験は大人でもワクワクする。子供たちにはしゃぐなという方が無理だ。
加藤さんは子供たちを必死に作業に戻そうとするけれど、男子児童たちは花びらを集めて腕に抱え頭上に放り投げてフラワーシャワーを楽しんでいる。校章の白と赤の花びらが混ざってしまい、また色を分けなくてはいけなくなった。
加藤さんは時間が迫る中慌てている。花びらを載せたまま大通りに運ばなければいけないので、その時間も考えて泣きそうな顔になっている。「こらー!」と怒鳴っても可愛らしい加藤さんの声では男子児童たちは笑うばかりだ。
こうなっては仕方ない。助けに行くか。
加藤さんに近づくと「チッ」と舌打ちが聞こえた。
「加藤さん……?」
「はい?」
私の顔を見た加藤さんはいつも通り可愛らしい笑顔に戻っている。
「大丈夫?」
「はい、間に合わせますよ!」
不自然なほど笑顔の加藤さんは散らばった花びらを白色と赤色に分けていく。
今の舌打ちは気のせいかな? いつもニコニコしてる加藤さんがする行動じゃないしね……。
加藤さんがまとめた花びらが男子児童によって再びごちゃごちゃにされる。その瞬間加藤さんの顔が見たことないくらい不機嫌になったから、私は慌てて足元の花びらをかき集め「おりゃー!」とふざける男子児童たちの上に投げ降らせた。
もういっそ満足させてからこの子たちに責任取らせる。
そう思って花びらを男子児童たちとぶつけ合う。けれど軽い花びらは痛くもないし遠くまで飛ばず、私たちの足元には花びらの山ができ始める。