この恋が手遅れになる前に
「そこのふざけてる男子と大人女子―!」
男性の大きな声に手を止めると、いつの間にか巡回に来ていたのだろう涼平くんがメガホンを持って朝礼台の上に立ち、私たちに向かって「残りの作業全部やらせますよー! 楽しいのはわかりますが遊ばないでくださいねー!」と校庭中に聞こえるように言い放った。
「すみません……」
小学生に交じって遊んでしまった私は恥ずかしくなって周囲に謝る。
「奏美さん」
いつの間にか涼平くんが近くに来ていて、私に苦笑している。
「また遊んでるんですか」
「いや……これから本気出そうとしてたとこで……」
「あなたはマジで中身は小学生男子ですか?」
「すみません……」
怒られる私を見て一緒にふざけていた男子児童たちは嘘のように真剣に散った花びらを色分けし始める。まるで怒られているのは私だけだと言わんばかりに。
それを見て「こうやって作業に戻したかったんだよ」と涼平くんを見て言い訳のように呟く。
「まったく……」
涼平くんは笑う。
「何年たっても変わってませんね。奏美さんが楽しんでどうするんですか」
その笑顔に私まで笑う。涼平くんが久々に笑ってくれた。この笑顔が見れるのなら私は全力で小学生を相手にしますとも。
私と涼平くんの会話を聞いていた加藤さんは不機嫌そうな顔をして花びらの色分けに取り掛かった。
そんな加藤さんに聞かれないよう、涼平くんは小声で「加藤さんじゃ頼りないから奏美さんについててもらったんです。お願いしますね」と囁いた。
「わかりました」
どちらが先輩かわからない会話にまた涼平くんが笑う。このまま私たちの関係が元に戻るんじゃないかと期待してしまうほどに。