この恋が手遅れになる前に
その姿で理解した。この年配の女性たちは毎年現れて飾りの花を抜いて持って帰ってしまう迷惑な人たちだ。
イベントの飾りで使った花は他の仕事でも使う予定がある会社の商品だ。勝手に持って帰られることに毎年悩んでいるのだけれど、盗んでいく人たちに悪いことをしている自覚がないのが厄介だった。
「商品なんです! 泥棒ですよ!」
「何よその言い方!」
言い合っている三人の姿に人が集まり始めた。
「無料で配ってる花もあるんだからこれを持って行ったっていいでしょう!」
私も怒りが湧いて言い合う三人に近寄ろうとしたとき突然加藤さんが叫んだ。
「ごちゃごちゃうるせーんだよクソババア!!」
愛らしい加藤さんからは想像できない悪態に驚いて足が止まる。
「醜いババアが花に触れんじゃねーよ! そのシワシワの手でゴミでも拾っておけっつーの!!」
「なんですって!?」
大声で怒鳴り合うせいでどんどん人が集まる。
このままではイベントのイメージに支障が出る。私はスマートフォンを出して政樹に電話をかけた。
「……はい」
「政樹、持ち帰りオバサンを見つけた! 大問題が起きてる! 西通りのイタリアンの店の前! 政樹でも役員でも誰でもいいから男性社員連れてきて!」
一気に伝えると通話を一方的に終えて揉める三人のもとに近づく。
「どうかされましたか?」
私は三人の間に割って入り、背後に加藤さんを追いやった。女性たちは一瞬驚いたけれど「この人がいきなり泥棒扱いするのよ! 暴言まで吐いて! 失礼じゃない!」と私に捲し立てる。
「この花は当社の商品ですので、持って帰られては困ります」
できるだけ平静を装って女性たちの目を見た。