この恋が手遅れになる前に
「いいですよ。気が済むまで泣いてください。僕の前では弱いところを見せてもいいんです」
この言葉に涙腺が崩壊した。
席が仕切られていてよかった。泣いているところを他のお客さんに見られたりしないから。
一通り泣くとすっきりしてきた。顔を上げると本田くんは私を見て微笑んでいる。
「大丈夫ですか?」
「うん……なんかごめんね……勝手に泣いて勝手にすっきりして」
「すっきりしたのなら良かったです」
私が泣き止むまで何も言わずに待っていてくれた。
ずっと飲み物に手をつけなかったのか、グラスには指の痕もなく綺麗に水滴がついている。
こんなところを見せてしまって恥ずかしい。彼氏と別れて酔って泣くなんて情けない。
『できる先輩』でいたかったのに、本田くんが優秀すぎて私がサポートされてしまっている。
化粧を直すためお手洗いに行っている間に本田くんは会計を済ませていた。少しは出そうと思っていたのに事前に言っていたように完全に奢られてしまった。
「ごちそうさまでした」
お礼を言うと本田くんは口に手を当てて俯いた。
「本田くん? 大丈夫? 酔った?」
お酒に強いとは言っても私より多く飲んでいたし、やっぱり酔ってしまったのだ。
近づいて本田くんの背中を摩る。すると私の肩に頭を載せられた。
「本田くん?」
「…………」
やっぱり調子が悪そうだ。
「酔うまで飲んじゃだめじゃん」
「酔ってませんよ」
「酔ってるでしょ」
私に体を預けるなんてどう見ても酔っている。
「帰れそう?」
「どうでしょう……」
「そういう状態を酔ってるって言うの」
本田くんの腰に手を回して体を支えながら道路に近づく。
ちょうどタクシーが走ってくるのが見えたから手を上げて止めた。