この恋が手遅れになる前に
「ほら乗りな」
開いたドアに本田くんを乗せようとしても私から離れようとしない。
「本田くん、ねえ、大丈夫?」
「無理です」
「無理って……」
「よければ古川さんについててほしいです……」
そう言われたら本田くんを一人で帰らせるわけにもいかない。仕方なくタクシーに一緒に乗った。
「家どの辺?」
後部座席に乗ると本田くんははっきりと行き先を告げた。自宅の住所だろう。
「本田くん、まだ気持ち悪い?」
意識はあるのだけれど、横に座る本田くんは私に体を寄せている。
「大丈夫です。酔ってませんから」
この様子のどこが酔っていないというのか。
相変わらず私の肩に頭を載せている。
本田くんは酔うと甘えるようになるらしい。しっかりしていると思っていたのに意外な一面を見た気がする。
私もかなり飲んでいるから酔って眠いのに、耳元で本田くんの声や息遣いが聞こえて緊張する。
本田くんのマンションの前にタクシーが停車すると、お金を払おうとする私を遮って本田くんがさっとカードを出した。
「え、大丈夫なの? 支払ってるって意識ある? 私出すけど」
「酔ってないので払えますよ」
納得していない私を外に出し、本田くんもタクシーから降りるとまた体を寄せてきた。
「私はここで帰るけど部屋まで行ける?」
すると本田くんは首を左右に振った。
「だめです……」
「だめって言われても……」
どうしよう。放っておけないけれど部屋まで連れて行くのは抵抗がある。
「古川さん……」
今にも泣きそうな目をして顔を赤くするから「わかったよ」と本田くんの体を支えてエントランスに入った。
エレベーターのボタンを押して中に入ると本田くんが私の体を抱きしめてきた。
「ちょっと! 本田くん!?」
いつもと違う態度に困惑する。