呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?
(もう! ロッテのせいであの後大変だったんだから!!)
翌朝、シンシアは心の中で悪態を吐いていた。部屋から飛び出したイザークは数刻後に帰ってきた。
薬師からペパーミントティーを処方してもらったらしく、息はとても爽やかになっていた。おまけにお風呂も済ませるという徹底ぶり。
それでも嫌われないか不安のようで、触っても大丈夫かと自信なさげに何度も訊いてくるので宥めるのに苦労した。
とんだ側杖を食う羽目になったシンシアだったが、ふとロッテのことを思い出す。
彼女はイザークが戻ってくるまでの間、ずっと落ち着かない様子で物言いたげにこちらを見つめてきた。結局最後まで口を開くことはなかったが、後ろ暗い何かがあるような気がしてならなかった。
(なんというかロッテは懺悔室にやって来る人たちと同じ雰囲気があったのよね)
人には言えない悩みや犯してしまった罪。そういったものを抱える人間は良心の呵責に耐えられず誰かに救いを求める。
ロッテはその人たち同様、表情に暗い影を落としていた。心配で尋ねたかったが、本人が話したくないという態度を貫いているのでそっとすることしかできなかった。
『考えても仕方ないわね。とにかく、使用人の出入り口を今日こそ見つけないと』
小さく息を吐くと、昨日とは反対側を探索するために部屋を出た。