恋愛境界線

11時30分からの回だから、そのホテルの最寄りの駅で11時に待ち合わせをしている。


これから一旦、自分のアパートに戻って、それからシャワーを浴びて、メイクもして――うわっ、やばい。このままじゃ完全に間に合わない!


「服が乾燥するのを待ってたら約束に間に合わなくなっちゃうので、代わりの服を貸してもらえませんか?」


「冗談だろう?」


「何が冗談なんですか!?本気ですよ。真剣にお願いしてるんです。課長、一生のお願いですから!」


「なぜ私が、君の一生のお願いとやらを聞き入れてやらなきゃいけないんだ」


仕事の鬼だと思っていたら、鬼なのは仕事に対してだけじゃなかったのか、この人は。


「課長、お願いします。これが私一人だけのことなら諦めますけど、随分前から友達と約束してたことなんです。若宮課長だってよく言ってるじゃないですか、約束を守れない人間は最低だって」


課長は、呆れたのか諦めたのか判らない様なため息を一つ吐き出すと


「少し待ってなさい」


そう言って、隣の部屋へと消えてしまった。


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