恋愛境界線
「じゃあ、私は先にお風呂に入らせてもらうとするよ」
課長はそれでも、使った食器はシンクまで運んでくれて、言うことはたまに辛辣だけど、基本的に根は優しい人なんだろうなって、少しずつ課長を理解出来てきた気がする。
「そうだ、課長。一つだけ言い忘れてることがありました」
バスルームへ向かおうとしていた課長の背中に向かって
「渚とは恋人なんかじゃないです。腐れ縁というか、幼なじみってだけで」
そう告げると、若宮課長はその足を止めて私の方を振り返った。
「いや、だから何がどうってわけじゃないんですけど……。ただ、さっき、課長が誤解しているみたいだったので」
一応訂正までに、と言って、スポンジを片手にグラス洗浄に取り掛かる。
「でも、緒方君は『忙しい時間を割いて、どうにか会いに来た』とか、そんな情熱的なことを言っていたらしいが?」
うわー、課長の耳にまで渚との会話が届いているとなると、もう既に色んな尾ヒレ付きで社内に噂が広まってるんだろうなぁ。