恋愛境界線
「目から鼻水が出るはずないだろう。いいから、馬鹿なことを言ってないで、早くここを開けなさい」
続く「服を渡せないじゃないか」という言葉に反応して、渋々とドアを開ける。
がっちりと布団を身体に巻きつけて、服だけ受け取ろうと右手を伸ばすと、若宮課長は私の頭にワンピースを載せて私の視界を遮った隙に、なぜか室内へと身体を滑り込ませてきた。
「ちょ、ちょっ、課長!何で入ってくるんですかー!?」
わー、わー!と、消防車のサイレンの様に叫びそうになる気持ちを堪えて、壁際まで一気に後退る。
「どうして君はそう、いちいち過剰に反応するんだ?」
そう言いながら、若宮課長はサイドテーブルに置かれてあったスマホを手に取った。
目的がそれだったと判れば、変な想像をしてしまった自分が恥ずかしい。
だけど、少しくらいは過剰に反応したくなるこっちの気持ちも察してくれたっていいと思う。