恋愛境界線
今まで、職場でしか――しかも仕事上で必要最低限のことしか、会話を交わしたことがない間柄なのに。
ある日突然、一緒のベッドで寝ていて、下着姿もバッチリ見られてしまうとか……!
こんな悪夢の連続みたいな現実に、大人の女の余裕を見せられるほど、私は経験値が高くない。
というか、経験値ゼロだし……。
「課長も課長で、もう少し慎みというものを持って下さい。上司と部下とはいえ、男と女なんですから」
こんなことを言ったら、また厚かましいだの、自意識過剰だのと、言われてしまいそうだけど――。
「その……、いつ間違いを起こすとも限らないじゃないですか。課長だって男、ですし……」
「君が、その手の心配をする必要は全くない」
「課長からしてみれば、私はそういう対象から外れているのかもしれませんけど……!」
それでも、万が一ってことも――と続ける私の言葉を、若宮課長は途中で遮った。
「いや、君がどうこうという問題ではなくて、女性に興味はないんだ」