恋愛境界線
決して涙腺は緩い方じゃないから、悲しみの涙なら堪えることは出来る。
けれど、どうして苛立ちからくる涙は、上手くコントロールが出来ないんだろう。
俯いているからなのか、泣きたくなくても目尻にじわじわと涙が溢れてくるのが判る。
「今は仕事中だ。泣くのは仕事が終わってからにしなさい。化粧が崩れたら見苦しい」
酷い。もう少し言い方ってものがあるのに、この人はどこまで冷血漢なんだろう。
腹立ち紛れに、「泣いてません!!!」と怒鳴る様な調子で言い返す。
そんな私を見ても、課長は「そう」と一言。どこ吹く風で、微塵も労わってくれない。
「本当は、すぐにでも蓮井さんの所へ謝罪しに行くべきなんだが、あいにく今日はどうしても外せない予定ばかりで、抜けられそうにない」
「大丈夫です。それなら、私が一人できちんと謝ってきますので」
「いや。事が事だけに、さすがに君一人で行かせるわけにはいかない。蓮井さんに対して、礼を欠くことにもなる」
今日の予定は出来るだけすべて早めに済ませてくる、と言った若宮課長と二人で、後から蓮井さんに謝りに行くことになった。