恋愛境界線

それにしても、若宮課長の言う『勘違い』って一体何のことだろう?と考えていると、こちらから訊ねる前に、向こうから説明してくれた。


「私が勝手に女性だと勘違いしていただけで、思い返してみれば、君は《純ちゃん》という友人が、女性だとは一言も言わなかった」


だから騙されたとは思っていない、と課長はリビングに向かいながら淡々と話す。


元のマンションの件を黙っていたことに対して怒っているとばかり思っていた私としては、まさかそっちのことだとは思わなくて。


それならば、なぜ課長にしてみれば顔さえ知らない純ちゃんの性別の件で、こんなにも不機嫌になっているのか、ますます判らなくなった。


「それで、君はこれからどうするんだ?どちらのお世話になるか決めたのか?」


「それはまだ、ですけど……。あの、どうしてそんなに怒ってるんですか?」


「だから、怒ってないと言ってるじゃないか」


「課長は怒っていると唇の端を噛むから判るんです!」


それに、と付け加える。


「課長が怒ってる原因が判らないと、私が謝れないじゃないですか……」


若宮課長はハァ、と室内に響く様なため息を吐き出すと、沈む様にそのままソファに身体を預けた。


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