恋愛境界線
押し当てている耳からは、少しだけ速い心音も伝わってくる。
声もその心音も、全てが心地良い。
トクトクトク、と次第に速まって行く自分の心拍数に煽られて、顔には熱が集中した。
「……芹沢君、聞いてるのか?まさか、立ったまま眠ってるんじゃないだろうね?」
「そんなわけないじゃないですかっ!」
課長のふざけたツッコミに、反射的に胸元から顔を離し顔を上げた。
「君、顔が赤いけど大丈夫か?」
私の前髪を掻き分け、額にそっと手の甲を押し当ててくる。
その動作は、普段の嫌味な若宮課長からは想像出来ないくらいに優しくて、そのことに酷く驚く。
「だ、大丈夫です!きっと、お酒の所為です。ちょっと酔っ払ったみたいで……」
そう誤魔化せば、「やっぱり酔っ払っていたんじゃないか」と、すかさずツッコまれた。