恋愛境界線

  * * *


「芹沢さん、今、手あいてない?」


出来れば、この資料を今すぐ広報の支倉さんの所へ持って行って欲しいんだけど。


浅見先輩にそう頼まれて、渡されたクリアファイルを手に広報部へと向かった。


同じ会社でも、部署によって室内の雰囲気は全然違う。


我が社の花形といえば企画だけれど、女性の新入社員が一番に憧れるのは宣伝や広報部だ。


男性社員の割合が比較的多い営業と違って、女性社員の割合が多いこの部署だけれど、来る度に営業部よりも雑多な印象を受ける室内には目を瞠るものがある。


まるで、雑誌の編集部と職員室の中間の様なイメージの散らかり具合だ。


だからといって、この部署は決して汚いわけではなく、各々のデスク周りにサンプルや雑誌が目立つというだけのこと。


そんな室内を見渡しながら、支倉さんの姿を探す。


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