恋愛境界線

「芹沢さん、奥田くんがごめんね」


「いえ。それより、そのファイル、浅見先輩から支倉さんに渡すように頼まれた物です」


「有難う。午前中に必要な物だったから助かったわ。本当は私が取りに行かなきゃいけないのに、わざわざごめんなさい」


支倉さんのせいじゃないのに、奥田さんのことを謝ってくれて、今だって自分のことを詫びてお礼を言ってくれる。


当たり前のことだけど、でも下の者にこんな風に丁寧に接してくれる人は案外少ない。


普通は「有難う」とか「助かったわ」とか、そういうたった一言で済んでしまうから。


「……芹沢さん?どうかしたの?」


「あっ、いえ。ちょっと考え事をしてただけです!今日のランチは何にしよっかな、って」


「えっ?あはは、確かにもうすぐお昼だものね。そうだ!今日のランチ、一緒にどう?」


ちょうど話したいこともあるの、と言われてしまえば、断るに断れなくて。


それは若宮課長のことだったりするのだろうか……なんて考えながら、「はい」と答えた。


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