恋愛境界線

「っと、ごめんなさい。私そろそろ行かないと。午後一で打ち合わせが入ってるの」


支倉さんが「悪いけど、お先に」と、トレイを持ってそっと立ち上がると、瀬田さんがそれを引き留めた。


「あのっ、ちなみに、例の噂は若宮さんには内緒にしてて下さいね……?」


「あの若宮さん相手に、面と向かってそんなこと言える人いると思う?」


そう言って、支倉さんはおどけてみせた後、優しく微笑んだ。


「支倉さん、綺麗な上にあの親しみやすさは反則だよね。道理で人気があるはずだ」


瀬田さんが、去って行く支倉さんの背中を見つめながらポツリと呟く。


「仕事も出来るしね。プレスといえば支倉さん、で有名だし」


「クレアトゥールのCMに起用する女優を、うちの別ブランドからシフトチェンジさせたのも支倉さんでしょ?」


「それ、もう決定したの?未定じゃなくて?」と、瀬田さんの隣に居た子が驚いた。


「同じ事務所の若手とベテラン女優も一緒に出演させるってことで決まったみたいだよ」


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