恋愛境界線

「確かにミスをしたのは私で、落ち度は私にありますが、その原因を渚との関係に結びつけるのはやめて下さい」


上げた頭の先では、課長を正面に捉えた私同様に、課長も私を真正面から見据えていて。


課長に対して怒っているはずなのに、こんな風に課長の顔をちゃんと見るのは久しぶりだとか、心なしか少し疲れている様な気がするだとか――そんな場違いな、取り留めのないことばかりが頭に浮かんだ。


「……私は別に、渚とのことで浮かれてはいませんし、そういう言い方は渚に対しても失礼だと思います」


弱まった勢いに、課長の視線を受け止め切れなくなって、またしても俯くと沈黙が広まった。


床で埋まった視界の端で、課長の足が私の方へ向かって一歩踏み出したのが見えた。


だけど、それは私の前で止まることはなく、風を切る様にスッと横を通り過ぎて行く。


私の横を通り過ぎる際、


「それなら――そう思われたくないのなら、こんなミスはしない様に」


酷く冷たい一言を置き去りにして、歩みを緩めることなく去って行った。


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