恋愛境界線
「……芹沢君、今、何て言った?」
もぐもぐとご飯を頬張る私に向かって、若宮課長が静かなトーンで問い掛けてきた。
「“外と社食とコンビニが、それぞれ三割三分三厘な感じです”?」
「違う。もっと後だ」
「“改めて社食の存在の有難さを実感中”ですか?」
「その前!」
「……忘れました」
「どうして急に嘘を吐くんだ。『財布を忘れてきた』と言ったばかりじゃないか」
「課長の方こそ!判ってるなら、どうして『何て言った?』なんて訊くんですか!」
ちなみに、私が嘘を吐いたのは、本能的に課長の不穏な空気を読み取ったからだ。
財布を忘れたからと言って、誰かに迷惑を掛けた訳でもないのに、課長に怒られる筋合いはない……はず。多分。