恋愛境界線
「君が、財布を忘れてきただのという信じられないことを言うから、耳を疑って訊き返したまでだ」
財布を忘れたことのどこが、そんなにも信じられないというのだろうか。
これはアレか。課長お得意の嫌味。もしくは皮肉。
「お言葉ですが、課長。財布は忘れてもスマホは忘れない、って言葉を聞いたことは?」
「私はどちらも忘れたことがないが、そういう人がいるらしいね」
「っていうことはつまり、財布を忘れる人というのは、私だけじゃないってことです。課長には信じられなくても、財布を忘れる人は課長が思っている以上に、この世の中に一定数存在しているってことなんですよ」
諭す様に説明し、再びお昼ご飯に手を伸ばす。
「全くもって意味の解らない理屈を並べているが、まさかそれは反論のつもりじゃないだろうね?」
……なんて嫌味くさい言い方なんだ!
「深山さんは課長と一緒にいて、よく性格が歪みませんね」
「深山君、馬鹿がうつるから相手にしないのが賢明だ」