恋愛境界線

余りにも堂々と渡されたから、自分の認識の方がおかしい様に感じてしまうけれど――。


「あの……こういう場合、貸すと言ったら現金じゃないでしょうか?」


「貸すとは言ったが、私は人に何かを貸す際は、返ってこないことを前提に貸している」


「他人を信用していない人間の、なかなか性格の悪いセリフですね」


だから現金ではなく、クオカードを貸すと?


それとも、金銭の貸し借りは良くないけど、金券の貸し借りは良いとでも……?


課長の理屈が理解出来ず、受け取るのを迷っている私の手は、中途半端な位置で熊手の様な形をして止まってしまっている。


「君の場合、借りたら返さないどころか、借りたことさえ忘れそうだけども。それは以前なにかのアンケートに答えた際にもらった物だから、遠慮なく使うといい」


「借りたことさえ忘れそうって……課長の中の私のイメージって、どんなですか!」


宙に浮いていた手で、クオカードをパァーン!と払い落としたくなった。


「というかですね、課長。クオカードでは社内の自販機で、飲み物を買うことすら出来ないんですけど?」


「コンビニまで行って、それを使えば良いじゃないか」


< 409 / 621 >

この作品をシェア

pagetop