恋愛境界線
あっ、なるほど!
若宮課長の返しに、思わずそう言いそうになってしまった自分が悔しい。
「……課長は嫌味なだけじゃなく、ケチだったんですね」
「何?」
「だって、財布を忘れた人間に、お金じゃなくてクオカードを貸す人なんて初めて見ましたよ!しかも、500円の!!」
「私は、社会人にもなって財布を忘れる人間を、今日初めて見たが?」
「そうでしょうね。課長の彼女さんは、私と違ってそういうことは絶対しないでしょうし!」
勢いで口走ったことに、しまったと思ったけれどもう遅い。
私の言葉に、若宮課長は「何を言ってるんだ?君は」と目を細めた。
「お食事中に失礼します。……遥、ちょっと」
静まり返りそうになった空気を破ったのは、思いもよらない渚の声だった。