恋愛境界線

「渚が、どうしてここにっ……!?」


驚いた拍子に勢い良く椅子から立ち上がる。


「お前なぁ、この間からわざとやってんのか?」


渚が、なにかでパコッと私の頭を軽く叩いた。


渚のセリフの意味が判らない私は、頭を叩いた物よりも、『この間からわざと』の言葉に気を取られた。


「腕時計の次は財布。この次は何を届けさせる気だよ、まったく」


ほら、と言って差し出されたのは、いつも使っている私の長財布。


いま、私の頭を叩いた物も、どうやらこれだったらしい。


「これ、どこに置いてあ――あ、有難う!!」


本当は、『どこに置いてあったの?』と訊こうとしたけれど、渚の車かマンションのどちらかしかない。


それをここで、こんなにも人目があるところで口にされたら、確実に付き合っていると誤解されてしまう。いや、もう手遅れ……?


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