恋愛境界線
道理で何なのか判らないけれど、深山さんはそこで言葉を濁し、課長に視線を流した。
そんな若宮課長と言えば、まるで興味はないと言わんばかりの表情で、さっきから黙々とご飯を片付けている。
生姜焼き定食が、そんなにも美味しいのだろうか?
……そんなわけないか。どうせ、私には微塵も興味はないってことなのだろうけど。
「あのっ、課長!」
「今度はなんだ?私からしてみれば、緒方君云々よりも、その声の方がよっぽど、この場を騒がせていると感じるが?」
要するに、煩いって、そう言いたいわけですか。そうですか。
課長の嫌味は華麗にスルーして、ずいっと手を伸ばした。
「せっかくお借りしたこちらですが、忘れない内に早速お返しします。有難うございました」
自分が貸したクオカードを前に、若宮課長が眉を寄せた。
「貸すとは言ったものの、返ってくるのを期待したわけじゃないのだから、別に返してくれなくて結構だ」