恋愛境界線

「……何だ、その顔は」


俯きがちにカレーを食べていた課長が、前髪の間からチラリと視線を覗かせる。


色気のある表情と、正面から捉えたその瞳に、思わずドキリとしてしまう。


「えっ!?その顔って、どういう意味ですか?生まれた時からこんな顔ですけど?」


「そういう意味じゃなくて、(ほう)けた顔という意味だ」


うわっ……!格好良いとか思ったことが、そのまま顔に出てしまってた!?


「どうせ君のことだから、『母親の口紅を引く姿が印象的で、自分も引いてみたくなって女装に走ったに違いない』とか、考えているんだろう?」


「違いますよ!そんなことは微塵(みじん)も思ってません!だって、女装の理由はさっき聞いたばかりじゃないですか!」


「でも、その聞いた事実を見事に忘れたり、勝手に頭の中で歪曲(わいきょく)したり、捏造(ねつぞう)したりするのが、君という人間じゃないか」


「えー…、課長の中の私のイメージって、ほんと、どんだけですか……?」


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