恋愛境界線
「こんなとこで、一人で何やってんだよ。後ろから見ると、まるでリストラされたサラリーマンみたいだぞ」
「……渚」
挨拶代わりに軽く手を上げた渚が、「そこ良い?」と、隣の空いているスペースに視線を向けた。
良いよという意味合いを込めて、少しだけ反対側にずれる。
この間はごめん――そう謝る隙も与えてくれずに、腰を下ろすなり渚が口を開いた。
「風邪、ひいたって?」
「うん」
どうして渚がそれを知ってるの?と訊ねたいのに、渚は尚も自分のペースで喋り続ける。
「だから、大人しくあそこにいてくれれば良かったのに」
強引だけど、さり気なく私の気持ちを読み取ってくれるいつもの渚とは、ちょっと様子が違う。
それも、この間のことを思えば当然のことではあるけれど。
「……ごめん」