恋愛境界線
「まっ、遥が俺の言うことを素直に聞いた試しはないしな。……それで、もう大丈夫なのか?」
「うん。……渚は?出てったきり、なかなか戻ってこないから、心配したんだからね」
「俺は、まぁ……ちょっと純のトコに1日だけ泊めてもらった」
帰ってきたら私の姿はなく、それを知った純ちゃんまでもが心配し、私のマンションを訪ねてくれたらしい。
けれど、私が帰ってきた気配はなく、会社も休んでしまったことで、二人には余計に心配を掛けてしまった様だ。
「本当に、ごめんね」
「それは聞き飽きたっつーの。他に、言うべきことは?」
謝る以外に、私が渚に言うべきこと……と、考えを巡らす。
どんなに考えても、ごめん以外の言葉は浮かんでこない。
「言うべきことじゃなくて、返すべき物なら――私が持ってるわけにはいかないだろうから、これ」
スマホに付けていた“いやげもの”のストラップを外して、渚に返した。